高齢者ドライバーによる交通事故の原因と対策を考えてみた
最近、高齢者ドライバーによる交通事故がよく報道されています。
今回は高齢者ドライバーによる事故について現在の対策を交えつつ、原因、対策について考えていきたいと思います。
高齢者ドライバーに対して現在行われている対策
75歳以上で運転免許証の更新を行う場合には、更新手続き前に認知機能検査と高齢者講習の受講が必須となっています。
認知機能検査
認知機能検査は「時間の見当識」「手がかり再生」「時計描画」の3つの検査が行われます。
警視庁のサイトで、検査の詳細や使用される検査用紙の確認が行えます。
時間の見当識
「今年は何年ですか?」や「今は何時何分ですか?」など、年月日や曜日等を回答していく設問になります。
手がかり再生
数十枚の絵を見せ、記憶させます。その後、何が描かれていたかを想起し、回答していく設問です。
時計描画
時計の文字盤を描き、指定された時刻を表す針を描く設問になります。
高齢者講習
認知機能検査の判定結果を元に受講する講習が変わります。検査結果は3段階に分けられます。
記憶力・判断力に心配なし
記憶力・判断力に心配なしと判定された場合には、2時間の高齢者講習を受講します。
記憶力・判断力が少し低くなっています
記憶力・判断力が少し低くなっていると判定された場合には、3時間の高齢者講習を受講します。
記憶力・判断力が低くなっています
記憶力・判断力が低くなっていると判定された場合には、専門医による診断・診断書の提出が必要となります。
その後、再度診断がなされ、問題がなければ3時間の高齢者講習を受講します。
以上が75歳以上の高齢者が免許更新時に行なっている交通事故の防止方法となります。
高齢者ドライバーによる事故の原因
高齢者ドライバーによる交通事故には、様々な原因が考えられます。
認知機能の低下
免許更新時に実施している検査からも分かるように自動車運転にはある程度の認知機能が必要となります。
標識の理解や信号機の理解、歩行者や自転車の行動予測、対向車・前にいる車との関係性など挙げればキリがありません。
厚生労働省の検査では、日本の認知症患者2012年の時点で464万人とされています。
65歳以上の高齢者では、約7人に1人が認知症と推定されています。
上記から分かるように65歳以上の認知症患者は大勢いることになります。
先ほど紹介した認知機能検査は75歳からが対象となるので、65歳〜74歳の方の中には、免許更新が出来たにも関わらず、認知症の患者がいる可能性があるということが考えらます。
判断能力の低下
自動車運転時には複数の情報(複数の歩行者・標識・道路状況など)を即座に判断する必要性がありますが、突然飛び出てでくる歩行者に対してのとっさな判断が鈍くなります。
身体機能面の低下
老化に伴い、筋力低下や体力低下が引き起こされることは周知の事実ですが、老化を原因として、視力や聴力の低下も引き起こるとされています。
視力低下では、視野の狭小化も引き起こされ、自動車運転時には成人に比べ対向車・歩行者の見落としや速度の誤認等が引き起こされると考えらます。
高齢者ドライバーによる交通事故への対策
Twitter等を見ていると免許の年齢上限を決め、「〇〇歳以上は免許剥奪を!!」なんてことを書いているツイートを目にします。
それが出来れば、高齢者による交通事故は減少する可能性もありますが、無免許運転で運転する高齢者ドライバーが増えてしまう可能性も考えられます。
高齢者に限ったことではありませんが、現に免許停止中の無免許運転が後を絶ちません。
高齢者ドライバーに対して免許を剥奪したところで、根本的な解決にはならないという事です。
家族の協力
高齢者ドライバーによる交通事故を減らすためには、家族の協力が1番の解決策になると思います。
家族から見て運転が少しでも心配な場合には、認知症外来等への受診を促し、専門医による適正な診断を促すことが大切となります。
また、運転をしなくても済むように、買い物等への送迎を行うことも必要になります。
インフラの整備
国や市町村によるインフラの整備が必要不可欠です。
駅やバス停が近くに無く、スーパー等が遠ければタクシーか自動車、家族の送迎といった選択になります。
核家族化の進行やタクシーの都心集中などを考えると、仕方がなく自動車という選択をしている高齢者も多いと考えられます。
福祉バス等を提供している市町村もあります。
また、スーパーの中には、高齢者の家に行き商品を売ってくれるサービスをしている店舗もあります。
こういったインフラ整備をしっかりと行うことで、自動車のいらない生活を高齢者に提供していくことが大切になります。
シニアカーや電動車椅子という選択肢(あくまで選択肢)
高齢者にとって今まで運転していたのに、急に免許や車を取り上げられることは自信の喪失に繋がります。
外出意欲がなくなり、引きこもってしまう高齢者もいることでしょう。
そういった、高齢者の自尊心を考慮すると、シニアカーや電動車椅子といった選択肢も良いのではないでしょうか。
シニアカーや電動車椅子は最高速度が時速6キロと法律で決められています。
時速6キロとは、人間の早歩き程度とされています。
時速6キロでも実際に操作するとかなり早く感じら、シニアカーによる事故があることも事実です。
もちろん、シニアカーや電動車椅子の操作にも認知機能や判断力を必要とします。
利用の前には、適正な評価を行うことが必須になりますが、適正な評価を行い使用することで、高齢者の自尊心を保ち、自立した生活を継続していくことが可能となります。
シニアカーや電動車椅子の利用には、購入かレンタルが選べます。介護保険を利用することでシニアカーのレンタルが行えます。
介護保険についてはこちらの記事をご覧ください。
終わりに
インフラの整備や代替え手段の選択肢を提案しましたが、高齢者ドライバーの交通事故を減らすためには、家族の協力が一番大切だと思います。
周囲から見ていて認知機能等で怪しい場面がある場合には、家族からしっかりと説明し、受診を促したり、運転の必要性を一緒に考えることが大切です。
1日も早く高齢者による残酷な交通事故がなくなることを祈ります。